オプション売りの本質的なリスクとは|りゅう先生講義録6

ある日の午後、コーヒーを味わいながら、「今日も後場、動ないなあ。もうこればっか」とぼやいているとき、ふとTLを眺めると、オプション売りに関する会話がりゅう先生とるる姉さんの間で交わされているのを目にした。当然のごとく、私は一人静かに聞き耳を立てた。

「オプションの売りは損失無限大だからアマチュアは手を出してはいけないと言われてますが、その本質的な意味は何でしょうか。何が危ないのか説明できるでしょうか。伝説みたいに言われ続けているから、そう思っているだけじゃないでしょうか。」

と、りゅう先生がるる先輩に投げかけていた。

確かに、オプションの売りは損失無限大の可能性があり、とても危険だから、しないという人が結構いるけど、その本質的なリスクって、損失が無限大になることじゃないの?と思いながら、その後に続く話に耳を傾けた。

オプションの売りの本質的なリスクは、たとえ、どの権利行使価格のオプションを売ったとしても、潜在的に売った枚数の先物ポジションを持ってしまうことです。このことはとても大事です。たとえば、現時点で50円程度の値段がついている06P210を10枚売ったとき、その最大利益は50万円ですが、そのポジションは潜在的に先物を10枚買っていることと同じことなのです。先物売買している個人投資家で先物10枚は簡単に買えない人でも50円のプットなら、10枚売れてしまうので、とても怖いことです。」

と、りゅう先生の解説が流暢な語り口でなされていた。
さらに、りゅう先生の解説はよどみなく続く。

同一限月・同一権利行使価格におけるプットとコールについて、「コール買い+プット売り(コール売り+プット買い)の合成先物はデルタ以外のクリークスはすべて0となり、そのデルタは1(-1)」となります。これがプット・コールパリティです。理論的には1(-1)になるが、実際は1にはならない。その理由は、呼値幅があるからで、ブラック・ショールズ方程式で得られるオプションプレミアムは連続値ですが、一方、実際に取引できるオプションは最低でも1円の呼値幅があります。そのため、寄り付き前であっても板付(ビットについているか、オファーについているか)で計算値が変わってきます。このことが重要なので、これを基にした裁定取引が行われているからです。」

このりゅう先生の解説を聞いても、???と思うかもしれませんが、次の式を見れば、そのことがよく理解できるでしょう。

合成先物(疑似先物)

式1 コール買い+プット売り=デルタ1(先物買い1枚)
式2 プット買い+コール売り=デルター1(先物売り1枚)

式1は、「コールを1枚買うということは、先物を1枚買って、同時にその権利行使価格のプットを1枚買うということと同じである」ことを表わしています。そして、式2も同様に「プットを1枚買うということは、先物を1枚売って、同時にその権利行使価格のコールを1枚買うということと同じある」と考えることができます。

式1より
コール買い=デルタ1(先物買い1枚)+プット買い(「売り」から「買い」になっていることに注意)

式2より
プット買い=デルター1(先物売り1枚)+コール買い(「売り」から「買い」になっていることに注意)

 
このことから、オプションの売りを次のように考えることができます。

オプションの売り

コール売り=先物売り1枚(デルター1)+プット売り
プット売り=先物買い1枚(デルタ1)+コール売り

これを見ると、どちらにも先物の売りや買いが入っていることが一目で分かると思います。

りゅう先生は、上のように熱く語った後、多くの人を諭すかのように物静かに次のような締めくくりの言葉で話を終えた。

「『プット・コールパリティに基づいたポジションリスクを理解した上でオプション取引をしないこと』、これこそがしっかりとした教育を受けていないディーラーさえも破産させてしまう最大の要因です。CFDやFXといったレバレッジに由来する破綻原因とは全く別物なので、資金管理だけでは回避できません。多くの人が言っているからという理由で、オプションの売りを必要以上に恐れる必要は全くありません。恐れるべきは、無知からくる意図せぬオーバーリスクです。オプションを学ぼうと思っている人は、シミュレーションを通して厳格なリスク管理を学んでほしいところです。」

ほとんど動かない後場、このオプションの売りに関する会話を盗み聞きできた私は、しばし至福の時を過ごせた満足感で満たされていた。このような話が毎日聞けるのなら、退屈な後場もそう悪くはないなと思ったのであった。